トップ > 導入事例 > 東京大学貞広先生
導入事例 東京大学 貞広先生 東京大学 貞広先生

2009年、数理システムとNumerical Optimizerにより、公立学校の配置計画の最適化システムを開発した東京大学の貞広幸雄教授。 専門である都市工学や空間情報科学の研究の一環として最適化の手法を活用している。 その活用の状況やGPSデータなどとマッチングさせた将来的な可能性についてうかがった。
>印刷用 PDF

Interview
学校配置から、スポーツのトレーニング、さらにバス路線図も

以前、Numerical Optimizerで学校の最適配置計画をされました。

貞広先生 数理システムとNumerical Optimizerにより開発した「公立小中学校再配置計画立案支援システム」は、生徒の数、通学距離、学校規模などで条件を設定し、それらを満たしつつ学校数を最小化する配置案をシミュレーションするものでした。 これを開発した当時、最適化というと一つの最適解をいかに迅速に導き出すかに焦点が置かれていましたが、このシステムはそれとは違い、同一の最小学校数を与える複数の案を出すようにしています。 学校数が同じでも、例えば生徒数を均一化するのであればこういう学校の残し方があるといったことを、条件別に見えるようにしたわけです。 たった一つの最適解では、「別の考えに基づいた学校配置はないのか」といった不満が出てきます。 行政の担当者が議論を重ね意見を一つに集約していく、そのための判断資料となるにはこのような最適化の出し方が求められるだろうと考えてのことです。 ちなみにこのシステムで、日本計画行政学会 学会賞を頂きました。


最近の先生の最適化事案を教えていただけますか。

貞広先生 学生の卒業論文で、オリエンテーリングの最適経路の算出を行いました。 オリエンテーリングとは、山野に設置されたポイントを地図とコンパスを使って指定された順序で通過し、ゴールまでの所要時間を競うスポーツです。 本学オリエンテーリング部の学生がその最適化を研究しました。 オリエンテーリングに関する学会誌のデータをもとに計算式を作ったり、国内のレースデータも採取して日本人の体力や日本の地形に合わせてキャリブレーションしたりしながらモデルを構築しました。 このモデルに実際のレースを走った人のデータを入れて検証したところ、レース結果に近いシミュレーション結果が得られました。 この最適化が興味深い点は、それがトレーニングに活用できることです。 コースのデータを入力すれば、最短時間で走れるルートが割り出せます。 それと実際に自分が走ろうとしたルートを比較することで、改善点が浮かび上がってきます。 坂道での走力を過大評価していたといったことが把握でき、その結果を練習に反映させることで走り方や判断力の向上が見込めます。 計画の最適化が個人能力の向上につながるという点で、これは面白い研究だと思いました。


先生ご自身はバス路線図を最適化されたそうですね。

貞広先生 もともと鉄道マニアで、その趣味が高じてバスの路線図を作りました。 地図学という研究分野があり、その中で路線図の描き方が議論されています。 路線図というとロンドンの地下鉄路線図が有名ですが、それをバス路線に応用して美しい路線図を作ろうと思ったのです。 路線がたくさんあってもそれらが交差しない、曲がるときも規則性を持って屈曲している、といったルールを作りそれが最適化されるように路線図を描きます。 その計算をNumerical Optimizerで行い、作成した路線図はCartography and Geographic Information Scienceという学術誌に数理システムと共著で発表しました。 路線が重ならないようにするには、ルートの先々まで先読みせねばならず実はかなり難解です。 千葉市内のバス路線を描くのが精一杯、本当は京都市内のバス路線を描いてみたかったのですが路線が多く重なり、複雑すぎて断念しました(笑)。 後に、この種の最適化は電気回路の基板製造などでもよく扱われているとアドバイスを受けました。 確かに、交差なく最短距離で経路を引く、といった点は同じですね。



データがリッチになっている今、最適化の対象や範囲も広がっている

GPSデータを活用した研究をされているそうですね。

貞広先生 今、各種の空間データが揃ってきており、それらを活用することで、新しい可能性が広がります。 例えば、個人の移動に関してその目的や交通手段などを調べたパーソントリップ調査があります。 そのデータと、携帯電話会社が持つ個人移動のGPSデータをマッチングさせることで、どんな人が、どのような目的で、毎日何時頃に、どこからどこまで動いているか、一年を通して概観できるようになります。 これまではどのエリアにどのくらいの人が住んでいるか、昼間人口や夜間人口などの大まかなデータしかなかったのですが、このような詳細なデータが使えるようになると最適化の求め方もきっと変わってくるはずです。 例えば災害や事故の際に被害を最小化する避難経路が、時間帯や曜日ごとに出せるようになります。 コンビニの配置計画なども、この地点は通勤と通学の人が多いからここに出店しよう、といったことが見えてくるでしょう。 朝に人が多い町、夜に多い町といったこともきめ細かく分かるようになり、そうなると行政の対応やインフラ設置などもこれまでよりもさらに効率化されるはずです。

Numerical Optimizerへのご要望をお聞かせください。

貞広先生 都市空間の中で人がどう動くか、そしてそれが将来どうなっていくのか、都市工学の研究者として非常に興味があります。 将来がどのように大幅に変化しようと、柔軟に対応できる都市空間を計画したい。 そうするには例えば、局所的な最適化だけでなく、長期的な視点に基づく最適化も必要になってきます。 例えば、現状の人口増減予測に基づく最適化だけでなく、著しく減ったとき、あるいは予想外に増えたときも含めて、より柔軟に最適化計算をし、都市計画などを行う必要があるでしょう。 Numerical Optimizerは、私や学生の研究に大いに役立ってくれました。 これからも大いに期待しています。 今、このツールに求めることがあるとしたら、GISとの連携です。 先ほどの人の動態などが、GPSデータではなく地図上でグラフィカルに見えるようになるといい。 そうすれば、冒頭の学校配置計画などもより説得力が出ますし、企業の出店計画なども容易になって用途も広がるのではないでしょうか。

導入事例の一覧へ