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導入事例 東京大学・千葉大学 貞広先生 東京大学・千葉大学 貞広先生

「公立小中学校再配置計画立案支援システム」は、学校の統廃合など自治体における 学校再配置計画を支援するシステムである。最大の特長は、現場の要請を踏まえて、 最適化の観点を利用しながら複数の適正な配置案を導出すること。導出した複数の 配置案を地図上で比較できる点も、ユーザが利用しやすい点となっている。
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Interview
客観的な論理と現実のデータから配置案を作成・提示

「公立小中学校再配置計画立案支援システム」の開発経緯と概要をお聞かせください。

貞広斎子先生 日本は今、少子化が進行し、全国で公立小中学校の余剰が問題になっていますね。2035年に は、子どもの数は6割にまで減るとも言われます。そのため学校をどのように統廃合し、適正配 置するか、各地で盛んに議論されています。このシステムは、そうした再配置計画を立案する材 料となるデータを提供する政策支援ツールです。自治体は審議会を設けて学校の適正配置を 検討しますが、定量的に表現できる部分は、できるだけ客観的な裏付けとなるデータがあった ほうがいいのではないか。いくつかの審議会での経験から、そのような考えに至り、数字に基づ く学校配置案を作成・提示するシステムを数理システムとともに開発することにしました。

貞広幸雄先生 ただ、学校配置は「子どもが半減したから、学校の数も半分にすればいい。地理的に近い2校 を1校に統合すればいい」という単純なものではありません。「子どもが通うのに遠すぎない」 「学校規模は大きすぎず、小さすぎず」など、さまざまな制約条件があります。 システムではユーザが、最大通学距離、学校容量の上限と下限、特定学校の存続・廃止の指定と いった条件を設定し、これらを満たしつつ学校数を最小化する配置案をシミュレーションし ます。計算結果は、配置案における基本統計量を示すほか、Excel上で配置案を分布図にした り、GIS(地図情報システム)で地図に表わすことができます。視覚的だから、誰が見ても理解 できる。これはとても意味のあることだと思いますね。


どの答えも使える!複数の適正な配置案を導出

このシステムで一番こだわった点はなんですか。

貞広斎子先生 Numerical Optimizerは最適解を提供するツールですが、このシステムでは複数の学校配置案を作成できる ようにしたことです。その理由は、最終的に学校配置を決定するのはシステムではなく、自治体 や住民であることです。従って、自治体や住民の話し合いの場に「最適解はこれだけ」という提 示ではダメで、「この案もいいけれど、こういう案もあり得る」と比較材料が必要です。こうした理 由から、このシステムではNumerical Optimizerの「最適化」という技術を活用しつつ、複数の答えを出せるよ うにしました。

貞広幸雄先生 こう言うと簡単ですが、そもそも一番いい答えを出すこと自体、難しいですよね。さまざまな制約 条件を考慮しながら、現場が納得する一番いいバランスを見つけ出さなければならないのですから。 しかも、それを複数案、出せるようにしたい。だから数理シス テムにそのことを要望した当初は、正直「できるのかな」と 思っていたんです。でもプロトタイプで検証すると、どの答え も有効だったので「これはすごい!」と。最適化を専門として いる数理システムならではのソリューションだと思いました。

現場が「使える。使いたい」と思う計算結果が導出されるシステムにするために、いろいろな要望を出されたのですね。

貞広斎子先生 住民の方々には議論に集中してもらうためにも、その根拠 としてデータを使ってほしい。そのためには「この計算結 果なら納得できる」という感覚を持ってもらわなければい けないので、数理システムには、あれもこれもと要望してし まいました。でも、たくさんのディスカッションを重ね、プ ロトタイプで検証し、要望に応えきってもらったことに感 謝しています。

貞広幸雄先生 例えば通学距離は、直線距離と道路距離の両方の指標を 考慮する必要がありました。直線距離は計算が簡単です が、道路距離だと複雑。数理システムには、そのための計 算ルーチンをシステムに書いてもらったりもしましたね。 ほかにも設定を変えられるようにしたり、さまざまな例 外ルールを追加したりし、納得のいくシステムに仕上がり ました。


問題点の把握にかかっていた2年間を解決!

計算結果として出てきた再配置案を、実際の審議の場にどのように活用するのですか。

貞広幸雄先生 このシステムで得られる計算結果から「この地域は学校 がまばらで統合できない」「ここは自治体の境界エリア で、一方は生徒が少なく、もう一方は定員オーバー」といっ た問題点が見えてくるので、それを地域カルテに書き込み ます。それを見れば「スクールバスを走らせれば、郊外で も学校を統合できるのではないか」「自治体の境界エリア は、例外的に越境通学を可能にしたらどうか」といったアイ ディアが浮かびます。再配置案は柔軟な政策立案のたた き台になり得ます。

 審議の場が大きく変わりそうですね。

貞広斎子先生 通常、学校再配置計画は、自治体が学校適正配置審議会な どを立ち上げて、2年近くかけて議論します。2年というと 十分な期間がありそうですが、議論に参加する住民が現 状を理解し、議論し、合意を形成するには、実はとてもタイ トな日程です。このシステムを使えば、その2年間をデータ による現状認識の側面からサポートし、議論と合意形成に集 中できるようになると思います。実際の活用はこれからです が、こうした定量的な政策支援がどれだけ有効で、現場に定 着させられるか楽しみです。

 都市施設の適正配置を支援するシステムとして、広く応用できそうですね。

貞広幸雄先生 今回は公立小中学校を対象としましたが、一般的な都市 施設の配置計画支援システムにも十分応用できると考え ています。例えば高齢者施設や救急医療施設などは今、 多くの自治体が適正配置を検討しています。今回の数式 に少し手を加えればバリエーションが広がります。ぜひ 別の分野でも、数理システムとともにシステム化を進めて みたいですね。

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